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海藻と海草の違いって何?

海藻

海中に生育する藻類を指し、形態は根、茎、葉の区別がないものが多く、根(付着器)
は栄養を地中から吸収するためではなく、岩に固着するためのものである。

増殖方法は付着器が分枝して繁殖したり、胞子や卵によって繁殖する。

多くは岩礁域に生育する。

体全体から栄養を取り込むため水質の影響を強く受ける。

海藻類は、種によりそれぞれ生育する水深、吸収・利用する光が異なり、異なった光合成色素
を体内に持つことから、大きく「緑藻」、「紅藻」、「褐藻」の3つに分けられる。

緑藻類:スジアオノリ、アオサ

紅藻類:アサクサノリ、マクサ(テングサ)などで食用になるものも多い。

褐藻類:アカモク(ホンダワラ科)、マコンブ、ワカメ、ヒジキ(ホンダワラ科)、モズク(ナガマツモ科)

●褐藻類の保全・再生

▶海中林:褐藻類のコンブ類、ワカメ類、アラメ・カジメ・クロメ類によって構成される

〔主な機能〕

・植食動物の餌場(サザエ・アワビ等)

・魚介類の餌場 等

▶ガラモ場:褐藻類のヒバマタ目ホンダワラ科に属するホンダワラ類によって構成される

〔主な機能〕

・魚介類の産卵場

・魚介類の幼稚仔の保育場、育成場

・流れ藻の供給源 等

【モズクの名前の由来】

語源は諸説あるが、最もよく説明されるのはホンダワラ類に着生することに基づく「藻付く(藻着く)」

海草

陸上の植物と同じ種子植物であり、維管束を持ち、花を咲かせ、種子を作る。

栄養分は、地中にのばした根から取り込む。葉からも吸収する。

また、種子だけでなく、地下茎により繁殖することが可能。

岩礁域に生育するものと砂泥域に生育するものがある。

よく知られる代表的な海草は、

本州周辺で見られる砂泥域のアマモ、コアマモ、岩礁域のスガモ、エビアマモ

▶アマモ場:単子葉類のヒルムシロ科に属するアマモ類によって構成される

〔主な機能〕
・魚介類の産卵場
・魚介類の幼稚仔の保育場、生育場
・流れ藻の供給源
・底質の安定 等

海藻と海草、繁殖方法の違いが面白い!

生活史※1

※1…生活史:生物の一生における生活の様子。海藻では胞子体の発芽から生長、成熟、枯死、再生産までを表す。

●海藻(カジメ類)

カジメ類の代表として、アラメの生活史を下記に示す。通年観察される藻体は無性世代*の胞子体**であり、秋成熟し、放出された遊走子***が着底すると雌雄の配偶体****に生長する。雄性配偶体からの精子が、雌性配偶体の卵と受精し、受精卵が着底して胞子となり、初春以降視認されるようになり、春に大きく生長する。2年目になると成熟後若干末枯れ*****、再生長。寿命5~6年。台風時など秋の波浪で流失するものが多い。

* 無性世代: 無性生殖をする世代のこと。海藻では胞子体での期間をさし、受精後の発芽から、胞子体の生長分化、遊走子放出までの世代をいう。
** 胞子体: 胞子を作る生物体。雄性配偶体から泳ぎ出た精子が雌性配偶体上の卵と受精したのち、発芽したものをさし、コンブ科海藻では目に見える世代のほとんどが胞子体である。
*** 遊走子: 鞭毛を持つ無性の胞子の一種。海藻では胞子体が成熟すると、体の一部にできた遊走子嚢から遊走子が海中に放出され、適当な基質に着生すると、鞭毛を失って配偶体となる。
**** 配偶体: 配偶子を作る生物体。海藻では遊走子が鞭毛を失って発芽した状態を配偶体といい、分裂生長して、雄性配偶体では精子が、雌性配偶体では卵が形成されるまでをいう。
***** 末枯れ: コンブ科海藻で用いられる言葉で、子嚢斑が形成された後、藻体の先端から葉状部の下部を残して流失する現象をいう。その後、水温の低下とともに再生長する。この時期に水温が高いなどのダメージがあると、再生長できなくなり、枯死脱落する。

●海藻(ホンダワラ類)

1年生のホンダワラ類の代表として、アカモクの生活史を下記に示す。同じような
生活史の種はシダモク、ホンダワラなどである。春受精卵が着底すると、発芽するが生長は
遅い。水温が低下し始めると伸長し、春から初夏に大型になり、成熟して雌雄の生殖器床*
を形成して、これに卵と精子が形成され成熟すると精子が放出されて、生殖器床上の卵と受
精する。この時期に藻体ごと流れ藻になることも多く、流出しない場合には珪藻などが付着
しはじめて立ち枯れる。

* 生殖器床: 生殖巣が形成される小枝または葉状部のことで、ホンダワラ科海藻など分化が進んだ種類にみられる。

(ホンダワラ科)ヒジキ

●海草(アマモ)

種子から発芽した株は3月頃から一部が花枝(生殖株)となり、そこに形成された花穂に種子ができる。6月中・下旬には、種子が熟して花穂から脱落し、海底の砂に埋まり冬季に発芽・生長することが確認されている。
養株の生活史では、分枝期、伸長期、衰退期があり、それぞれの特徴を以下に示す。

分枝期(10月~2月);衰退した栄養株は、分枝して新芽がでて株数が増加する。
伸長期(2月~6月); 新芽や発芽体は、生長が盛んになり6月ころ草丈が最大にな
る。
衰退期(7月~9月); 草丈が最大となった栄養株は、枯死する株もあり株数が最小と
なる。

引用文献:海藻類 – 国土交通省、藻場造成ガイドブック 改訂版 2013 – 水産庁